「じゃあ、あとは任せたよ!」
「なんで終わってないの?」
「まずいな、どうするの?」
部下と会話するときに、こんな言葉をかけていませんか?
実は、そのちょっとした一言で“心理的安全性”を失っいるかもしれません。
近年、心理的安全性という言葉が注目を集めています。
- チームや組織をなんとかしたい
- 会議を意味のあるものにしたい
- 部下に成長してほしい
このような問題を解決するには、まず“心理的安全性”を確保することが必須になります。
そこで今回は“心理的安全性”が理解できる1冊を紹介します!
それが原田将嗣さんの著書『心理的安全性をつくる言葉55』です。
具体的な“心理的安全性をつくる言葉”が書かれており、実践的な内容になっているので今すぐ使える言葉ばかりです。
ちょっとした一言を“心理的安全性をつくる言葉”に変えて、チームの問題を改善していきましょう!
この本でわかること
心理的安全性とは?
心理的安全性をつくる4つの因子
心理的安全性をつくる言葉
基本情報
【タイトル】心理的安全性をつくることば55
【著者】原田将嗣
【監修】石井遼介
【出版社】飛鳥新社
【初版発行日】2022年8月6日
【ページ数】306頁
著者について
2020年にプロコーチとして独立。
㈱ZENTechでは、企業へ心理的安全性を浸透させるための組織開発・育成計画の企画提案、研修講師、マネジャー向けコーチングを担当。
本書が初の著作となります。
全体的な感想
- 内容が具体的で実践しやすい
- “言葉”の解説が詳しい
- 巻末の一覧がGOOD
内容が具体的で実践しやすい
『心理的安全性をつくる言葉55』というタイトルからわかるように、“実際に使える言葉”が書かれています。
本書の構成は「普段使いがちなNG言葉」⇒「心理的安全性をつくる言葉」へと変えてくれる、いわば言い換え辞典のような本です。
✕ じゃあ任せたから。頼んだよ ⇒ ○ 誰に相談すると進みそうですか
✕ ムリでしょう ⇒ ○ その視点はなかった!
✕ 大変だけど頑張ろう ⇒ ○ やめたほうがいい仕事ってなんだろう?
✕がNG言葉、○が心理的安全性をつくる言葉です。
NG言葉を見ると、つい使ってしまっている言葉ばかりではないでしょうか。
「この発言で心理的安全性を崩していたのか」と気づくこともできます。
“言葉”の解説が詳しい
本書の良いところは“言葉”の紹介だけでなく、具体的に会話での使い方が書かれている点です。
一つ例を紹介します。
✕ そういえば私も… ⇒ ○ もうちょっと聞かせてもらえますか?
NG例(相手の話を奪ってしまう)
「この間、休みの日にはじめてキャンプに行ったんです」
『心理的安全性をつくる言葉55』p155より
「あぁ、キャンプね。いいよね。僕も3年前からハマっていてね。この間は湖畔に行って楽しんできたんだよね。新しいテントを買って、これがまた使い心地よくてさ〜」
「(上司の話になっちゃったなぁ……)テントいいですね……
NG例に対して、OK例も記載されています。
このようなときは、質問して掘り下げてみましょう。
「この間、休みの日にはじめてキャンプに行ったんです」
『心理的安全性をつくる言葉55』p156より
「へぇ、そうなんですね!もうちょっと聞かせてもらえますか?」
「〇〇さんがキャンプに行った話を聞いて、行ってみたいと思っていたんです。それで実際に行ってみたら、夜の静かな時間がとても心地よくて 〜 略 〜」
このように上司と部下が話している情景が浮かぶような具体例が書かれています。
使う場面がイメージしやすいので、自分に落とし込み実践しやすい工夫がされています。
巻末の一覧がGOOD
「55個の言葉載っているけどそんな覚えられないよ」
「この本1冊持ち歩くわけにはいかないしな…」
このように感じる人も多いかと思います。
しかし、本書はそのような人のために「心理的安全性4つの因子別 言葉一覧」が準備されています。
本購入者特典サイトもあり、そこからPDFとしてダウンロードも可能です。
印刷してデスクに置いておけば、省スペースでいつでも心理的安全性をつくる言葉を確認できます。
本書のポイント
全体的なポイントとしては、
チームの問題を解消・改善するために、話助挑新に合わせた本書の言葉を活用する
ということです。
まずは本書の目次を確認していきましょう。
本書は心理的安全性をつくる4つの因子「話助挑新」で言葉が分類されています。
各場面において話・助・挑・新どの因子に対して、どのような言葉をかけるのが有効的なのか。
難しいかもしれないですが、この1冊が解決してくれるので安心して読み進めてください。
心理的安全性が高いチームとは?
「心理的安全性」とは、組織やチーム全体の成果に向けて、率直な意見や素朴な疑問、そして違和感の指摘がいつでも、誰でも気兼ねなく言えること
『心理的安全性のつくりかた』より
単にチームの仲が良いというわけではありません。
目指しているゴールや成果のために「健全な意見の衝突」が起こせるチームを心理的安全性が高いチームということができます。
「心理的安全性」という言葉が登場したのは、1965年のことです。
その後、ハーバード大学のエイミー・C・エドモンド教授が論文の中で「チームの心理的安全性」という概念を提唱しました。
近年は米Google社が「チームの心理的安全性」の重要性を見出したことで一気に有名になった言葉です。
ビジネスを考える上で欠かせない言葉となっています。
心理的安全性をつくる4つの因子
著者がシニアコンサルタントを務める㈱ZENTechでは、日本の組織文化・働き方・職場環境に合わせた「日本版・心理的安全性」づくりに取り組んできました。
そこで、6000チーム以上の検証を重ねた結果見出したのが、心理的安全性を高めるために重要な4つの因子です。
以下の通りです。
- 話しやすさ
- 助け合い
- 挑戦
- 新奇歓迎
個別に説明していきます。
話しやすさ
話しやすさ因子とは「情報共有が頻繁に行われる環境か」ということです
量だけでなく質も重要です。
「言いにくけれど、仕事をすすめる上で大切なこと」
「不都合だけど、必要な真実」
このようなことが共有できる環境でしょうか。
助け合い
助け合い因子とは「お互い助け合える環境か」ということです。
ミスやトラブルがあったときに、個人を責めず、チームで改善・解決に向けて建設的な対話ができる状態です。
「助け合い」なので、
- 先輩から後輩に
- リーダーから部下に
上の立場の人が下の立場の人に助けを求めることができているかも重要になってきます。
挑戦
挑戦因子とは「結果に限らず挑戦そのものを歓迎できる環境か」ということです。
組織では、挑戦ではなく成功が歓迎されいる場合がほとんどです。
挑戦には失敗がつきもの。
この挑戦因子を高く保つことで、アイデアや企画がでやすくなり、挑戦の総量を増やすことができます。
新奇歓迎
新奇歓迎因子とは「的外れや新しい視点を歓迎する環境か」ということです。
多様性を早期に受け入れてうまく活用すること。
常識にとらわれずメンバーの個性を尊重することです。
「きっかけ言葉」と「おかえし言葉」をバランスよく
本書の中では55の言葉が紹介されていますが、これらは「きっかけ言葉」と「おかえし言葉」の2つに大別されます。
きっかけ言葉:相手の行動を促す言葉
おかえし言葉:相手の行動や結果を受け止める言葉
多くのリーダーは「きっかけ言葉」が多くアンバランスになりがちです。
心理的安全性を高めるためには「両方をバランスよく使うこと」が重要です。
また、きっかけ言葉は聞き手によって言い方を気をつける必要があります。
新入社員に「新規事業案を作っておいて」と言ってもハードルが高いと感じるでしょう。
事務員に「この図面の説明を詳細に作って」と言ってもイメージしにくでしょう。
その場合、
- 聞き手が余裕でできる業務より、一歩上を選ぶ
- 内容を噛み砕いて言う
そうすることで成長を見据えた、明瞭で良い「きっかけ言葉」をかけることができます。
毎日使いたい!チームの土壌をつくる言葉
最後に具体的に紹介されている言葉を一部紹介して終わりたいと思います。
止まっていることって、なんですか?
NG:なんで終わってないの?
OK:止まっていることって、なんですか?
「なぜ」「なんで」という表現は、意図せずとも相手を咎める印象を与えてしまうため、相手を萎縮させてしまいます。
相手からは「すいません」と謝罪の言葉のみで、話が先に進まない状況になります。
この場面では「なにが」「どこで」止まっているのか、事実を把握する言葉を使うようにすると良いです。
個人を責めるのではなく、解決策や前に進む工夫を話し合えるようなチーム目指していきましょう。
それはちょうどよかった!
NG:まずいな、どうするんだ?
OK:それはちょうどよかった!
仕事をする上でトラブル、アクシデント、ミスは避けては通れないものです。
そこで「まずいな、どうするんだ?」と部下を叱責した場合、心理的安全性を損なうことになります。
そのようなときに便利な言葉が「それはちょうどよかった!」です。
「申し訳ありません、貸会議室の予約手続きの期限が昨日までだったのですが、うっかり忘れていました。大変なミスをしてしまいました……」
「それはちょうどよかった。……他の会議室を使ってみるチャンスだね」
『心理的安全性をつくる言葉55』p73より
叱ったり、怒鳴ったりしても心理的安全性を失うだけで起きたことを変えることはできません。
まずは気持ちを切り替えて、起きたことへの解決策を建設的に話し合うことが重要です。
〜してくれてありがとう
NG:いろいろありがとう
OK:〜してくれてありがとう!
無反応より「ありがとう」の言葉があった方がいいですが、できれば理由付きのありがとうにしてみてください。
具体的な行動に感謝すると嬉しいし、次回も同じ行動をしようという意識が強くなります。
抽象より具体の「ありがとう」を言ってみてください。
まとめ
今回は心理的安全性をつくる言葉が学べる原田将嗣さんの著書『心理的安全性をつくる言葉55』を紹介しました。
今回紹介したのはほんの一部の言葉のみです。
本書には、様々な場面で使える具体的な言葉が書かれています。
- チームや組織をなんとかしたい
- 会議を意味のあるものにしたい
- 部下に成長してほしい
そんな悩みのあるリーダーは今すぐ手に取ってほしい一冊です。
ちょっとした一言で心理的安全性を作ってください。
コメント