「とりあえず見て学べ!」
「忙しいから後で教える!」
「やってみて覚えて!」
工場という閉鎖された空間では、先輩社員からやり方を教わり、知識を身に着けていくことが多いです。それゆえに“古いやり方”が根付いていることも多いです。
しかし、そのやり方は必ずしも「正しいやり方」とは限らず、私は失敗を経験を通じて「自己学習」の大切を学びました。
自己学習では「読書」がオススメです。
工場勤務が読書?と疑問に思われるかもしれませんが、自己学習で最も簡単なのが「本を読むこと」だと考えています。
- 正しい知識が得られる
- 自分の好きなタイミングで知りたいことが知れる
- 低価格で学べる
このように「本を読むこと」は様々なメリットがあります。

私は本から知識を得て、実践していくこと10年。
現在はプライム上場企業の工場でラインリーダーをしています。
もちろん諸先輩方の指導あってのことだと思いますが、本を読むことで差をつけられた実感もあります。
- 工場勤務で伸び悩んでいる人
- 工場配属になった人
本記事では、そのような方に向けて「私が読んだ工場勤務にオススメの本」をご紹介していきます。
なぜ工場勤務が本を読むのか

工場での教育は、OJTと通信教育が一般的ではないでしょうか。
※OJTとは?
On the Job Training (オンザジョブトレーニング)の略で、職場の上司や先輩が、部下や後輩に対して、実際の仕事を通じて指導する教育方法。
私は10年間工場で働いてきて、基本的にOJTで学んできました。会社で通信教育を受講できる仕組みもあったので、できる限り受講し今まで20件近く受講しました。
しかし、教育を受ける中でそれらには問題点があると考えています。
- OJTで自己流が広がってしまう
- 忙しいを理由にOJTが中途半端
- 通信教育はコスパが悪い
- 通信教育はミスマッチが発生しやすい
一つずつ説明していきましょう。
OJTで自己流が広がってしまう
手とり足取り先輩が教えてくれた知識は「正しい知識」でしょうか?
私の経験談を少し書きます。
ある部品が破損して、ラインが半日近く停止してしまったことがありました。
原因は「交換方法が違ったこと」
当事者に話を聞いたところ、交換方法は先輩社員に教わったとのこと。その先輩社員さらに上の先輩社員に…
このように数十年にわたり、間違った知識がその現場の「正しい知識」として存在していることは珍しくありません。
その知識の発信源が曖昧だとこのようなことが発生してしまいます。
忙しいを理由にOJTが中途半端
OJTの場合、教える側の力量や職場の環境で取得できる知識に差が生じます。
右も左もわからない新入社員時代、私は先輩に1日中付いて回り仕事を学んでいました。
しかし、人員不足でバタバタした職場だったので、
「忙しいから後で教えるね!」
「バタバタしてるからとりあえず見といて!」
これが現場でいわれる「見て盗め」の所以かもしれません。
そんな感じで1年が経ち、たいして教えてもらえないまま独り立ち。そして、そこから失敗の連続。
精神的にかなり辛かったですが、そこから私は「自己学習」の大切さを学べました。
通信教育はコスパが悪い
はじめに断っておくと、全ての通信教育が悪いというわけではありません。
中には技術講座専門のJTEX
企業によっては補助が出ることもあると思いますが、たいていは期限や成績など補助に条件があります。
学びたいことを学べるけど、受講するとテストがついてくるし、忙しい現場で時間の融通が利かない通信教育はナンセンス。
それでいて1講座数万円するものが多いので、コストパフォーマンスがいいとは言いがたいです。
ただし、
- 資格系の講座
- ある程度の強制力がほしい人
など、条件によっては受講する価値は十分にあります。
通信教育はミスマッチが多い
教材で学ぶとなると、教材が自分に合うかというのはとても重要だと思います。
サンプルで中身が見れたとしても、実際受講してみたら「イメージと違った」なんてことも多々あります。
- 頭に入ってこない
- 高額だから無理やりやる
- 期限があってストレス
よかれと思って始めたのに、教材や内容が合わないために負担となってしまいます。
また、会社側が用意してくれる通信教育は人事部が選定していることが多いと思います。
そもそも取りたい講座がないという経験もあります。
工場勤務が本を読むメリット

以上を理由に私が考える工場勤務が本を読むメリットは3点あります。
- 正しい知識が得られる
- 自分の好きなタイミングで知りたいことが知れる
- 低価格で学べる
まず書籍は出版社から出ている時点で「内容の正確さ」が認められています。
正しい知識を得ることで、自分が教育者になったときのOJTが飛躍的に向上します。そうすれば職場全体のレベルアップにも繋がります。
また、通信教育を実施した際のデメリット
- ミスマッチ
- コスト
- タイミング
をすべて網羅できると考えられます。
書店にいけば中身を確認できますし、通常の書籍よりはやや高いですが数千円で購入することができます。期限もないので、自分のペースで学習することができます。
必要なのは読み続ける「根気」くらいです。
工場勤務にオススメの本

ではここから具体的なオススメ本を紹介していきます。
簡単な解説と「こんな人にオススメ」を書いていいますので、気になった本は是非手にとっていただきたいです。
新人IErと学ぶ 実践IEの強化書
【著者】日本インダストリアル・エンジニアリング協会
【出版社】日刊工業新聞社
【初版発行日】2021/3/24
【ページ数】208頁
IEとは簡単にいうと改善することです。
現場ではいかに業務改善して、コストダウンや生産性を向上させるかが求められます。
本書では「仕組み」を見直すことでムダを省くことを中心に話が進みます。
中身は対話形式で進んでいくので、普段本を読まない方でも安心して読むことができます。
- 現場で改善を進めたい人
- IEをよく理解していない人
新・まるごと工場コストダウン事典
【著者】五十嵐 瞭
【出版社】日刊工業新聞社
【初版発行日】2008/1/1
【ページ数】204頁
「コストダウンせよ!」と言われても、何をしていいかわからないというのが正直なところ。
本書では、材料費、人件費、不良削減、エネルギー削減などなど。様々な視点からコストダウンについて知ることができます。
アイデアが詰まっている一冊ですので、ネタに困ったら見返してみるといいかもしれません。
- 改善案が浮かばない人
- コストダウンに悩んでいる人
ポカミス「ゼロ」徹底対策ガイド
【著者】中崎 勝
【出版社】日刊工業新聞社
【初版発行日】2018/3/21
【ページ数】184頁
ポカミスってなかなか無くならなくて困っていませんか?
ポカミスが発生するには、それなりの理由があります。本書にはそれが書かれています。
人間の心理状態や現場の改善など、図説込みで書かれているのでとてもわかり易い一冊です。
ただ、AIの文字に釣られて購入すると、期待し過ぎになっちゃうかも。
- ポカミスを無くしたい管理スタッフ
- ポカミスをしたくない現場オペレーター
失敗の科学
【著者】マシュー・サイド
【出版社】ディスカヴァー・トゥエンティワン
【初版発行日】2016/12/23
【ページ数】348頁
現場にミスはつき物です。
しかし、その失敗から学習するのか、失敗を放置するのか、失敗を隠蔽するのか。失敗の次にする行動で組織の成長は雲泥の差になります。
工場の話は少ししかありませんが、事例が多く書かれているためイメージしやすい1冊です。
冒頭の医療現場と航空業界の違いだけでも、かなり衝撃的なので読んでみてください。
- 失敗がこわい人
- 最近失敗してしまった人
ちょこっと改善が企業を変える
【著者】柿内 幸夫
【出版社】経団連出版
【初版発行日】2012/10/20
【ページ数】198頁
改善活動にハードルを感じたことありませんか?
本書では改善のハードルを下げるちょこっと改善「チョコ案」を推奨しています。
どちらかというと工場を管理する側の視点でかかれていますが、「16の改善キーワード」などの章は実務者にも知ってもらいたい内容です。
改善の視野が大きく広がる1冊です。
- 職場の改善を加速させたいリーダー
- どんな改善をすればいいかわからない人
今と未来がわかる工場
【著者】多田夏代
【出版社】ナツメ社
【初版発行日】2022/7/14
【ページ数】240頁
これは工場に関わる全ての人に読んでいただきたい。
誰が読んでもどこかに学びがある網羅性と未来への投資イメージが湧く本です。
「製造基盤 BASE6」という工場の基本を6つに分類して、現状を理解して改善していく。
お堅い見た目の本が多いですが、本書はカラーで、ポップで、図が多く読みやすい本です。
これから工場で働く方には、特にオススメです。
詳しくはコチラの記事でも紹介しています。
- 初めて工場で働く新入社員
- 大まかに復習したいリーダーや管理職
生産マネジメント入門Ⅰ・Ⅱ
【著者】藤本 隆宏
【出版社】日経BPマーケティング
【初版発行日】2001/6/1
【ページ数】385頁
【著者】藤本 隆宏
【出版社】日経BPマーケティング
【初版発行日】2001/6/1
【ページ数】365頁
少々重ための本です。生産マネジメントの本ですので、工場の管理職やリーダーのなった方へオススメの本です。
工場を管理する立場としては、この2冊で大体のことは知ることができます。
自動車の例が多く書かれているため、自動車メーカーの方は特に参考になります。
- 工場の管理職
- はじめてリーダーになった人
〈図解〉基本からよくわかる品質管理と品質改善のしくみ
【著者】西村 仁
【出版社】日本実業出版社
【初版発行日】2015/10/16
【ページ数】217頁
これだけは言えます「品質管理業務についたら必ず読んでください」
図解ありで見やすい内容、実用的でシンプルな内容。「とにかく読みやすい」にも関わらず重要な部分はしっかりおさえています。
新人さんはまずこの1冊で問題ないです。
- 初めて品質管理業務をやる方
- 工場配属になった新入社員
トヨタ仕事の基本大全
【著者】㈱OJTソリューションズ
【出版社】KADOKAWA
【初版発行日】2015/2/20
【ページ数】383頁
仕事の問題点を見つけ、改善し、日々成長していく。
工場にいると耳が痛いほど聞く「トヨタの生産方式」ですが、これは製造業に関わらず、ビジネスマンとしての考え方を学ぶことができます。
もちろん5S、改善、問題解決の8ステップなど工場で活用できる内容も盛りだくさんです。
- 向上心が薄れてきた若手
- 工場配属になった新入社員
イラストで楽しく学ぶ!食中毒の知識
【著者】伊藤 武、西島 基弘、おのみさ
【出版社】講談社
【初版発行日】2022/10/24
【ページ数】224頁
私自身が食品工場で働いているということもあり、紹介したいのがこの1冊です。
食品工場で働く人にとって、食中毒の知識は持っていなければいけない内容です。
2022年10月発売で比較的新しい本で、イラストが多く、ポイントを掴んで学ぶことができます。
- 食品工場で働いている人
- 教育係としてOJTする人
トヨタ必須の17の品質管理手法を伝授 品質の教科書
【著者】皆川 一二
【出版社】日経BP
【初版発行日】2020/8/20
【ページ数】290頁
「教科書」という名前の通り、品質について素晴らしくまとまっている本です。
品質に関係する職場なら必ず知っておかなければいけない内容です。前述した『〈図解〉基本からよくわかる品質管理と品質改善のしくみ』よりはやや詳しく書いてあります。
電子書籍もありますが、本の構成的に「紙の本」をオススメします。
- 品質管理業務をしている人
- はじめてリーダーになった人
機械保全のための部品交換・調整作業
【著者】小笠原 邦夫
【出版社】日刊工業新聞社
【初版発行日】2022/5/28
【ページ数】192頁
ベルトやチェーンの交換、軸受・プーリーの交換、シールテープの巻き方など、機械保全の基本中の基本ですが、この部分は特にOJTに偏りがちです。
間違えたやり方で実施すると、機械の消耗を早めてしまうことにもなるので正しい知識を身に着けておきたいです。
本書は写真が多いのが特徴ですが、それがすべてカラーであることがオススメする点です。
また、カラー写真が整っていながら3,000円しないので、専門書としては低価格です。
- 日々メンテナンス業務を実施する人
- 教育係になった人
生産管理のすべてがわかる本
【著者】石川 和幸
【出版社】日本実業出版社
【初版発行日】2022/7/29
【ページ数】214頁
生産管理で働いている方は読んでおきたい1冊。
基本的な部分もわかりやすく書かれていますが、AI・IoT・DXといった将来取り入れていかなければいけない内容も網羅されているのがポイントです。
知っている便利なことも書いていますので、より効率をあげたい方にもおすすめです。
- これから生産管理業務をはじめる人
- 効率的な工場運営をしたい人
トヨタ リーダー1年目の教科書
【著者】㈱OJTソリューションズ
【出版社】KADOKAWA
【初版発行日】2022/11/24
【ページ数】256頁
【価格】1,650円(税込)
トレーナー全員がトヨタ出身という㈱OJTソリューションズが書いたリーダーの教科書。
トヨタで理想とされている「協働力のあるリーダー」について書かれた本です。
本書では「3つの技法」が紹介されています。
- TCS(Toyota Communication Skill)
- TJI(Toyota Job Instruction)
- TPS(Toyota Production System)
それぞれリーダーとしての必要なノウハウが紹介されており、本書では上記のTCSが多く解説されています。
そのため、信頼関係をつくるマインドや部下が自ら動くようになるテクニックなど人間関係のテクニックが多い印象です。
⇒- 良好な人間関係を築きたい方
- 初めてリーダーになった方
池上彰の行動経済学入門
【監修】池上 彰
【出版社】学研プラス
【初版発行日】2022/3/17
【ページ数】160頁
工場の管理スタッフになると、思った以上に「人を動かす」ことが多いことに驚きます。
人動かすのも高圧的になるとパワハラになってしまう近年。
そこで自然と人を動かすという観点から「行動経済学」に知識はとても役に立っています。
内容が厳選されており、本の構成もとても見やすいので行動経済学を学ぶ最初の一冊にオススメです。
- 人が多い職場のリーダー
- 職場を上手くまとめたい人
まとめ
本記事では、工場勤務にオススメの本15選をご紹介しました。
この3冊は特に実践的でオススメですので、迷った方はここから選んでみてもいいかもしれません。
- 正しい知識が得られる
- 自分の好きなタイミングで知りたいことが知れる
- 低価格で学べる
メリットはたくさんありますので、ぜひ自己学習に「本」を活用してみてください。
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