工場の本ならこの1冊『今と未来がわかる工場』多田夏代 著【書評】

書評

「計画通りにモノが作れない」
「生産性が上がらない」
「不良が多い」

工場ではこのような悩みが絶えず存在しています。

これらの原因は、“基本的なこと”いわゆる「製造基盤 BASE6」を改善するだけで解決します。

「製造基盤 BASE6」とは?

工場の基本を6つに分類したもの。各項目を評価・点数化して、工場の実力を確認するために使用する。

重要度の高い順に、「安全度」「5S推進度」「標準作業度」「多高能度」「管理職機能度」「自立活動度」の6つから成る。

どうでしょう。何か思い当たる点はありましたか?

本記事ではそんな工場の問題を解決する1冊を紹介します。

それが多田夏代さんの著書『今と未来がわかる 工場』です。

本書は工場の問題解決だけでなく、「工場とは」という根本の内容から未来の工場の姿まで非常に網羅性が高い1冊です。

工場系の書籍には、堅苦しい印象の多い専門書が多い中、ビジュアル多め・ポップな印象の本でとても読みやすくなっています。

  • 新入社員の教科書
  • これからのリーダーの基盤作り
  • 管理職の復習に

様々な用途で使用できる1冊です。



本の基本情報

タイトル:今と未来がわかる 工場
著者名:多田 夏代
出版社:ナツメ社
初版発行日:2022年8月2日
ページ数:239頁

著者:多田夏代について

防衛省での原価積算を10年担当。

その後生産系コンサルティング会社にて14年間工場のコンサルタントを担当し、多くの企業を支援。

2017年に株式会社ZERO1を起業され、工場収益改善を実施されています。

本の全体的な感想

まずは全体的な感想を書いていきます。

  • カラーの図解で読みやすい
  • 内容の網羅性が高い
  • PDFファイルが具体的かつ実用的

カラーの図解で読みやすい

個人的な感覚ですが、工場の本というと専門書で堅く・地味な印象がありました。

しかし、本書はポップな色や図解を多用しており、全体的に読みやすかったです。

表紙からもその印象が垣間見えます。

基本構成としては、見開きで完結しており、左ページは詳細の文章説明があり、右ページで図解による説明がされています。

力まず読みすすめることができるので、内容が頭に入ってきます。

内容の網羅性が高い

本書を読んだ後に感じたのが

新入社員の教科書にしたい!

ということです。

「工場とは」から始まり、「未来の工場の話」まで様々なことが書かれているため、とても満足感の高い1冊でした。

新入社員にはぜひ工場で仕事を始める前に読んでもらいたいと感じました。

だからと言って内容が陳腐なわけではないので、これからリーダーになる方やこれから管理職になる方が復習として十分に使用できる内容でもあります。

工場にデスクがある方はこの1冊を置いておくといいでしょう。

PDFファイルが具体的かつ実用的

本書には要所でPDFファイルが用意されています。

内容はチェックシートや一覧ですが、この内容が具体的で実際の現場で十分に使用できる内容となっています。

具体的な内容としては、

  • 5S推進度チェックシート
  • 安全度チェックシート
  • 製造視点の機会損失一覧 など

これらのPDFを眺めているだけでも新しい発見がありました。

本書のポイント

全体的なポイントとしては、

概要を掴む⇒基本となる土台を整える⇒やるべきことの理解⇒未来への取り組み

といった印象です。

ではまずは目次を確認しています。

目次

第1章:製造業を取り巻く環境
第2章:工場の基本とその評価
第3章:経営戦略と工場
第4章:製造部門の役割と改善視点
第5章:関節部門の役割と改善視点
第6章:これからの工場に求められるものとは
第7章:未来に向けた工場づくり

前述しましたが、とても網羅性があり10年工場で働いている私でも初めて知ることもありました

特に本書の中で強調されていたのが「製造基盤 BASE6ベーシックス」です。

「製造基盤 BASE6」とは?

工場の基本を6つに分類したもの。各項目を評価・点数化して、工場の実力を確認するために使用する。

重要度の高い順に、「安全度」「5S推進度」「標準作業度」「多高能度」「管理職機能度」「自立活動度」の6つから成る。

これは著者の造語ですが、本書の中でも説明に多くのページが割かれています。

基本ができていないまま、利益や生産性向上など、経営直結型の高い目標を掲げても達成できません。

『今と未来がわかる 工場』p44より

著者がコンサルタントで訪問した工場の多くが「基本的なことができていない」ことで解決する悩を抱えているそうです。

これには私もかなり共感です

逆に基本的なことができているだけで安定した生産をすることが可能です。

工場に欠かせない「製造基盤 BASE6」

ここからは本書の内容に触れつつ紹介していきます。

工場の目標達成のためには、まず基礎ができているのが必須。

それを自己評価して点数化するのが「製造基盤 BASE6ベーシックス」です。

前述した通り「製造基盤 BASE6ベーシックス」は下記の6つの要素で構成されています。

  1. 安全度
  2. 5S推進度
  3. 標準作業度
  4. 多高能度
  5. 管理職機能度
  6. 自律活動度

では、一つ一つ説明していきましょう。

安全度

「製造基盤 BASE6」で最も重要度が高いのがこの「安全度」です。

「命」「健康」は何よりも大切で、仕事でそれらを壊すようなことはあってはならないことです。

本書では事故が発生しないための対策を4M3Hで考えるとよいと書かれています。

4Mとは?

人(Man)、設備(Machine)、方法(Method)、材料(Material)の頭文字を取った4つの要素のこと

3Hとは?

事故やミスが起こりやすい状態を表す「はじめて、変更、久しぶり」の頭文字を取ったもの

4M3Hの要素を書き出して掲示するなど可視化することで、意識して作業に取り組むことにつながり、事故の予防となります。

また、トップが全体を俯瞰してみて危険な部分を洗い出していく必要もあります。

5S推進度

製造現場ではお決まりになっている整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5S活動

「生産に追われて5Sまでたどり着いていない」という職場も多いかと思います。

しかし、5S活動に大きなメリットがあります。

5S活動のメリット
  • モノを探す時間がなくなる
  • ラクに作業できる
  • 早期に異常に気づけるようになる

短期的な結果しか見ずに実施しないのはとてももったいないです。

中には「なかなか継続しない」という悩みをお持ちの方も多いと思います。

5S活動には、定期的にモチベーションを上げる仕掛けや仕組みが必要です。

  • ポイント制にして定期的に表彰する
  • 実施した5Sを掲示する
  • 朝礼などで実施した内容を発表する

など様々な方法があります。

標準作業度

「アナタの職場には、作業標準や標準作業時間は存在しますか?」

これらを設定しておかないと様々な問題が発生すると本書には記載されています。

作業標準、標準作業時間で発生する問題
  • 事故が起こりやすくなる
  • 品質が安定しない
  • 計画した生産時間で生産できない
  • 作業者の教育が難しい

作業標準や標準作業時間がない職場は、独学がはびこり、気づいたら間違ったやり方がデフォルトになっていることもあります。

最近では動画や音声などで作成するマニュアルもあり、簡単かつ正確な基準を作成することができます。

具体的な作成方法はぜひ本書で確認してみてください。

多高能度

一般には多能工と言われています。

一人の作業者が担当できる工程を複数持つことを指します。

人員数の関係もあるので、技量の向上は計画的に実施することが重要です。

管理職は、従業員の能力・スキルを数字で表し、評価を可視化したスキルマップを作成し、定期的なチェックとフォローを実施することで育成を進めていきます。

管理職機能度

工場には管理するべきポイントが多く、管理職がすべき業務がたくさんあります。

管理職の業務は大きく4つ分けることができます。

管理職の業務
  1. 目標達成業務…利益目標、品質目標など
  2. 組織強化業務…部下の教育など
  3. 決裁業務…日々の決裁や指示
  4. 処理業務…日常的にこなす作業

この中でも「目標達成業務」「組織強化業務」の2つに注力していく必要があります。

  • 毎日のルーチンでほとんどの時間を使う
  • 横入りが多くそれどころじゃない

そんな方はIT化や権限移譲を検討し、負担を軽減する必要があります。

自律活動度

自律活動度とは、著者の造語で、従業員一人ひとりがアイデアを出し、自主改善をすすめる力のことをいいます。

「さあ!アイデアを出してください!」

といっても良いアイデアが出るのはほんの一握りでしょう。

  • 5SやIE研修を実施する
  • 他社の工場見学にいく
  • 最新鋭設備の展示会にいく

良いアイデアを出すためにも、このような「学びの場」を提供することが自主活動推進につながります。

これから「選ばれる工場」になるためには

現在は時代の流れが早く、コロナウィルスの大流行など何が起こるかわからないVUCA時代とも言われています。

そんな時代を生き残るために「どのような工場」を目指せばいいのでしょうか

最後に、本書で書かれている「これまでの工場」と「これからの工場」を紹介したいと思います。

これまでの工場これからの工場
安全な工場高齢者、女性、外国人であっても
安心・安全でラクに働ける工場
品質・生産性の高い工場デジタル・自動化による省人化工場
マネジメント力・改善力が高い工場
(月次で工場の良し悪しが把握できる)
必要な情報をラクにリアルタイムに
収集して遠隔でも即判断ができる工場
多品種生産が可能な工場多品種少量生産に対応でき、
準備・段取りが最短化された多機能工場
省エネ工場環境に配慮した地球にやさしい工場
モノづくりによる利益追求モノづくり+サービスの提供による利益追求

どうでしょうか?

少なくとも私は左の「これまでの工場」で止まっていました。

今後は現状維持ではなく、これからの工場を意識して工場に変革をもたらすことが必要になります。

そこで初めて「選ばれる工場」となるわけです。

まとめ

今回は工場の悩みという切り口から、多田夏代さんの著書『今と未来がわかる 工場』を紹介しました。

製造基盤 BASE6で工場の悩みは解決する

これから選ばれる工場になるために必要なこと

がご理解いただけたと思います。

冒頭でも書きましたが、とても網羅性の高い1冊なので、本記事ではほんの一部しか書いておりません

  • 新入社員の教科書
  • これからのリーダーの基盤作り
  • 管理職の復習に

このような用途で、ぜひ手に取っていただきたいです。

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